目の病気と生活環境について
目の病気と生活環境について
目の病気に関連する生活環境因子として、喫煙、運動、食事・栄養素、睡眠を取り上げてみました。
1. 喫煙
喫煙と関連が深い目の病気には「加齢黄斑変性症」「白内障」があり、「ドライアイ」「原発開放緑内障」も発症や進行に関連する可能性があるといわれています。2022年WHOは白内障、加齢黄斑変性症、緑内障による失明予防策として禁煙の重要性を指摘しています。
コンタクトレンズ関連ドライアイでは、喫煙者の有病率が非喫煙者の約2倍という報告があります。
2. 運動
身体活動量とドライアイは負の関連、座位時間/ディスプレイ視聴時間とドライアイは正の関連が認められ、身体活動を増やすことによるドライアイの抑制効果が認められています。
また、眼圧は運動により有意に低下し、有酸素運動が原発開放隅角緑内障の進行を抑制するというエビデンスが出てきています。具体的には、5000歩/日の歩行を行うか、座位時間を2.6時間/日に短くすることで、視野欠損の進行を約10%抑制できることが分かっています。
3. 食事・栄養素
アメリカの研究では、ビタミンⅭ のサプリメントを10年以上服用している群は、白内障手術を受けるリスクが20~30%低く、特に、非喫煙者と女性において顕著であった。ビタミンE、カロテノイド(ビタミンA
、ルテイン、ゼアキサンチン)摂取でも同様な結果が得られています。アメリカでは加齢性白内障の予防として、緑黄色野菜(ほうれん草、ケールなど)、果物、その他抗酸化物質を含む食品の摂取が勧められています。
抗酸化物質(ビタミンⅭ、E、ルテイン、ゼアキサンチン)が加齢黄斑変性症の発症や進行を減少させることも分かっています。男性において、食事由来の脂肪酸摂取量が増えるほど加齢黄斑変性症の有病率が低下することが分かりました。また、パン、麺類、米などの様々な主食を取り入れた群では加齢黄斑変性症の有病率が低い傾向も認められています。
4. 睡眠
睡眠の質の低下(寝つきの悪さ、中途覚醒、起床時疲労感)はドライアイの有病率を有意に上げ、一日7~8時間の睡眠時間の群が最もドライアイの有病率が低いことが分かりました。
緑内障に関しては、睡眠時無呼吸症候群は緑内障のリスク因子で、視野障害のスピードも速いことが報告されています。さらに、持続陽圧呼吸療法を導入すると視野障害のスピードの進行抑制が認められています。
以上のように、禁煙、適度な運動、バランスの良い食事、良質な睡眠が、加齢のよる様々な目の病気の予防に寄与すると考えられています。
参考文献:羽入田明子.眼疾患のリスク因子としての生活環境要因.日本の眼科2024;
95:1420-1425